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シェーグレン症候群

シェーグレン症候群

シェーグレン症候群は、涙や唾液が出にくくなる「乾燥」を主な症状とする病気です。しかし、単なる乾燥にとどまらず、全身のさまざまな臓器に影響が出ることがあり、臓器病変次第では命に関わることもある危険な病気です。このページでは、シェーグレン症候群の基本的な知識から治療法、日常生活での注意点について詳しく解説します。

1. シェーグレン症候群とは

シェーグレン症候群は、本来は細菌やウイルスから体を守るはずの免疫というシステムが、誤って自分自身の体を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです。 シェーグレン症候群はその中でも特に「(せん;分泌する臓器)」が攻撃されやすいことが特徴で、涙を出す「涙腺」や唾液を出す「唾液腺」が攻撃されるため、目が乾いたり、口が渇いたりする症状が特徴的です。その一方で、腺に似た構造をもつ臓器「肺」「腎臓」なども同時に攻撃されることがあり、これら臓器が攻撃された場合には重症となります。

2. どんな人に多いか:有病率や疫学

この病気は、圧倒的に女性に多く見られます。患者さんの9割以上が女性で、特に50代から60代で診断されることが多いですが、子供や若い人、男性が発症することもあります。

3. 原因

なぜ免疫が自分を攻撃し始めるのか、その完全な原因はまだ解明されていません。しかし、一つの原因ではなく、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。これらが複雑に組み合わさり、免疫システムが暴走して、涙腺や唾液腺などを破壊してしまいます。

遺伝的な体質

生まれつきの体質(遺伝子)が関係しています。

環境要因

ウイルス感染などがきっかけになる可能性があります。

ホルモンバランス

女性ホルモンの減少が関係していると言われており、更年期以降に発症しやすいことと関連があると考えられています。

4. シェーグレン症候群で攻撃される臓器と症状

症状は大きく分けて、「乾燥症状」と「全身の症状」の2つがあります。

■ 乾燥症状

これらは頻度が多く、また患者さんの不快感が強い症状ですが、幸いなことに命に関わることはありません。そのため、治療も免疫を下げる強い治療(免疫抑制治療)は行わず、目薬や噴霧薬を用いた対処療法を行います。

1) 目(ドライアイ)

涙が減ることで、目がゴロゴロする、砂が入ったような感じがする、光がまぶしい、目が疲れるといった症状が出ます。

2) 唾液腺(ドライマウス)

唾液が減ることで、パンやビスケットなどの乾いたものが飲み込みにくい、味が分かりにくい、口の中がネバネバする、虫歯が増えるといった症状が出ます。また強い炎症がおきた場合などには「唾液腺炎」をおこし、耳下腺(耳の下)や顎下腺(あごの下)が腫れて痛むことがあります。

■ 全身の症状

3) 肺・気管支

シェーグレン症候群で合併しやすい臓器病変のひとつで、約10~25%で合併するとされています。免疫が肺や気管支を攻撃して破壊し、咳が続いたり、肺活量が減って呼吸ができなくなることがあります。命に関わる臓器病変なため、治療はステロイドホルモン(プレドニゾロン)を用いた強い免疫抑制治療を行います。そのため、シェーグレン症候群の患者さんは定期的な胸部レントゲン検査による肺が壊れていないかの確認や、呼吸機能検査で肺活量が低下していないか確認することが大切です。

4) 腎病変

シェーグレン症候群で合併しやすい臓器病変のひとつで、約5~14%で合併するとされています。免疫が腎臓を攻撃して破壊し、腎臓の機能が低下し、治療を行わないと人工透析が必要になることがあります。腎臓の攻撃のパターンは大きく2つのパターンがあり、「間質性腎炎(尿の成分を調節する尿細管の周りの炎症)」と「糸球体腎炎(血液をろ過する糸球体の炎症)」に分けられます。命に関わる臓器病変なため、治療はステロイドホルモン(プレドニゾロン)を用いた強い免疫抑制治療を行います。尿検査や血液検査でのミネラル異常で確認をすることができるため、定期的な尿検査と血液検査にる腎機能の確認が大切です。

5) 脳・神経病変

シェーグレン症候群で合併しやすい臓器病変のひとつです。特に手足などの末梢神経の障害が多く、脳や脊髄などの中枢神経の症状は比較的少ないとされています。治療は、軽症であれば神経の痛みをとる薬による対処療法を行いますが、重症の場合、進行していく場合、血管の炎症を伴っている場合には、ステロイドホルモン(プレドニゾロン)などを用いた強い免疫抑制治療を行います。

6) 肝臓病変

シェーグレン症候群で合併しやすい臓器病変のひとつで、シェーグレン症候群の患者さんの約5~26%に肝障害を合併するとされています。免疫が肝臓を攻撃して破壊し、肝臓の数値が悪化します。具体的には、攻撃の仕方により「原発性胆汁性胆管炎(PBC)」や「自己免疫性肝炎(AIH)」というパターンをとることが多いです。ただし、脂肪肝やシェーグレン症候群に使用する薬の影響のことも多いため、区別が重要になります。見逃さないようにするためにも、定期的な血液検査による肝機能の確認が大切です。

7) 甲状腺(内分泌)病変

シェーグレン症候群の患者さんの10~70%(文献により大きく差がありますが)に、甲状腺の形やホルモンの量、または甲状腺に関する抗体などの甲状腺の異常が見つかるとされています。具体的には、橋本病Basedow病と言われる、甲状腺ホルモンの量が減る/増える病気を起こしやすいとされています。甲状腺ホルモンは体の代謝や活気・体温調節などを行います。そのため、甲状腺ホルモンが多いとイライラしたり痩せやすくなったり動悸を感じるようになります。逆に甲状腺ホルモンが減ると、だるくなったり、無気力になったり、脈が遅くなるようになります。甲状腺ホルモンは血液検査で簡単に確認することができます。そのため、シェーグレン症候群の患者さんがこれらの症状を起こした際には甲状腺ホルモンを測定することが大切です。

8) 関節病変

シェーグレン症候群の患者さんの2人に1人が関節の痛みを感じるとされています。その一方で、単なる痛みだけでなく、免疫を下げる治療が必要な「関節炎(関節の腫れと赤み)」を起こすことは決して多くはないとされています。シェーグレン症候群の方が起こす関節炎は、左右対称で、一時的で朝のこわばりを感じることが多いとされています。軽症の場合には痛み止めや抗炎症薬を使用して対処しますが、それで改善しない場合には、抗リウマチ薬(関節リウマチで使用する免疫を下げる薬)を使用することもあります。

なお、関節が痛い場合でも、必ずしも関節そのものに炎症があるとは限りません。シェーグレン症候群の患者さんの最大40%が「線維筋痛症」を合併します。線維筋痛症は、(関節を含めた)身体自体は問題がないのですが、全身の痛みを起こしてしまう病気です。この病気の場合には、免疫を下げる治療が効かないため、対処療法を行っていくことになります。本当の関節炎か、そうでないかの見極めも大切になります。

9) 高ガンマグロブリン血症・リンパ節炎・悪性リンパ腫(リンパ球の活性化)

シェーグレン症候群では免疫系統に与える影響が大きいと言われています。具体的には、身体の免疫を担う白血球の一種である「リンパ球」が過剰に活性化することがあります。リンパ球は「抗体」と言われるウイルスなどと戦うための免疫の物質を産生し、それが過剰になると血液中に抗体が多い状態「高ガンマグロブリン血症」となります。シェーグレン症候群の患者さんの36~62%でみられるとされています。
リンパ球の異常な活性化がリンパ節で起こると「リンパ節炎」となり、リンパ節が腫れたり、熱がでることもあります。このリンパ節の腫れで最も注意しなければならないものが「悪性リンパ腫」です。悪性リンパ腫は血液のがんの一種で、リンパ節の腫れが引かない場合に考えなければなりません。シェーグレン症候群の患者さんは一般の方と比較してリスクが高いとされています。

5. シェーグレン症候群の診断

日本でシェーグレン症候群として難病申請をする際に使用される診断基準には「シェーグレン症候群改訂診断基準(厚生労働省研究班、1999年)」が用いられています。

診断基準

「シェーグレン症候群(SjS)改訂診断基準(厚生労働省研究班、1999年)」

1. 生検病理組織検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A) 口唇腺組織でリンパ球浸潤が4mm2当たり1focus 以上
B) 涙腺組織でリンパ球浸潤が4mm2当たり1focus 以上

2. 口腔検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A) 唾液腺造影で stageI (直径 1mm未満の小点状陰影)以上の異常所見
B) 唾液分泌量低下(ガムテスト10分間で10mL以下、又はサクソンテスト2分間2g以下)があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見

3. 眼科検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A) シルマー試験で5mm/5min以下で、かつローズベンガルテストでスコア3以上
B) シルマー試験で5mm/5min以下で、かつ蛍光色素試験で陽性

4. 血清検査で次のいずれかの陽性所見を認めること

A) 抗SS-A抗体陽性
B) 抗SS-B抗体陽性

<診断のカテゴリー>以上1, 2, 3, 4いずれか2項目が陽性であればシェーグレン症候群と診断

こあら内科クリニックでは、「ガムテストや血清検査」を実施できます。

唾液腺造影や唾液腺シンチグラフィは耳鼻咽喉科先生方と、ドライアイの検査を眼科先生方と協力しながら実施することで、診断を目指していきます。

6. 難病の申請

シェーグレン症候群は国の指定難病に該当する病気で、「指定難病医療費助成申請」を行い認定をうけることで、シェーグレン症候群に対する治療費用については国からの補助をうけることができようになります。
ただし認定を受けるためには「シェーグレン症候群の診断」と「シェーグレン症候群の重症度」が認定基準を満たす必要があります。
認定を受けるために必要な書類は複数ありますが、その中でも「臨床調査個人票」は主治医の先生に書いてもらう必要があります
シェーグレン症候群の患者さんで、ご自身が医療費助成を満たすか気になる方や、申請について気になる方は、主治医先生にご相談ください。
 ※ 臨床個人調査票に関わる文章料は公費助成の対象にはなりません
 ※ 書類を提出しても認定されるかは審査結果によります

7. シェーグレン症候群の臓器ごとの治療方法

現時点では、シェーグレン症候群を完全に治す薬はありませんが、症状を和らげ、臓器のダメージを防ぐための治療を行います。

〇 目の治療(ドライアイ)

  • 点眼薬(目薬):ヒアルロン酸の目薬や、涙の分泌を促す目薬を用います

〇 口の治療(ドライマウス)

  • 唾液分泌促進薬:唾液を出やすくする飲み薬を用います。ただし、お腹の副作用が出やすいことや、肝臓が悪くなることがあるため注意が必要です。
  • 保湿:人工唾液スプレーを噴霧したり、こまめに水を飲むようにします。
  • 虫歯予防:唾液が減ると虫歯になりやすくなるため、フッ素入りの歯磨き粉を使ったり、歯科で定期的なケアを受けたりすることが非常に重要です。

 

〇 関節病変:痛みどめで対処したり、関節リウマチに用いる免疫を調節する薬を使用することがあります。

〇 甲状腺病変:甲状腺ホルモンが過剰な場合は抑える薬や、不足する場合は補う治療を行います

〇 重い内臓の病変(肺・気管支・腎臓・神経病変など):症状の重さにもよりますが、ステロイド薬や免疫抑制薬を用いた治療します。場合により入院して治療を行うことがあります。

8. シェーグレン症候群の治療・通院をしなければならない理由

「ただ乾くだけだから」と放置してはいけません。適切な治療を受けないと、次のような問題が起こる可能性があります。

〇 内臓のダメージ

シェーグレン症候群の方は肺・腎臓などの臓器が壊れることが一定数ありますが、これらの臓器は余力があるため(壊れても余裕があるため)最初は症状がなく、自身で気が付くことができません。症状が出るころにはすでに臓器が壊れていることも多いため、定期的に臓器の病気が安定しているかを確認することが大切です。膠原病内科を通院いただくことで、安定しているかを評価することができます。

〇 目の障害

重度のドライアイを放置すると、目の表面(角膜)に傷がついたり、視力が低下したりする恐れがあります。

〇 口のトラブル

唾液がないと虫歯が急激に増え、歯を失う原因になります。

9. 治療目標

治療の目標は、大きく分けて2つあります。

1. 症状の改善

乾燥による不快感を減らし、日常生活を快適に送れるようにすること。

2. 合併症の予防

肺や腎臓などの内臓に障害が出ないように管理し、もし出た場合でも早期に発見して食い止めることが大切です。定期的な病気の確認が大切です。

10. 予後

多くの患者さんにとって、シェーグレン症候群は命に関わる病気ではなく、適切なケアを行いながら天寿を全うすることができます。 ただし、一部の患者さんでは、肺や腎臓の病気が進んだりすることがあります。これらを見逃さないようにすることが大切です。

最後に

シェーグレン症候群と付き合っていく上で、最も大切なことは「症状がなくても、専門医を定期的に受診する」ということです。特に、以下の検査は非常に重要です。

  • 定期的な胸部レントゲン検査:肺の病気は、初期には咳や息切れなどの自覚症状がないことがあります。
  • 定期的な尿検査:腎臓の病気も、痛みなどの症状が出にくく、尿検査で初めて気づかれることが多いです。

「乾燥以外の症状がないから大丈夫」と思っていても、体の中で変化が起きている可能性があります。早期に発見できれば、それだけ治療の選択肢も増え、臓器を守ることができます。
当院では膠原病内科の専門医と指導医の資格を持った医師が治療にあたります。
千葉でシェーグレン症候群の診断・治療が気になった方は、是非「こあら内科クリニック」にご相談下さい!

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