メトトレキサートの副作用と注意点
メトトレキサートは、関節リウマチの進行を抑えるための最も重要な飲み薬です。
関節リウマチの治療になくてはならないメトトレキサートですが、体の中で免疫の働きを調整する薬であるため、どうしても副作用が出ることがあります。メトトレキサートを安全に、そして長く使い続けるためには、どんな副作用があるのかを知り、患者さん自身が適切に対策をすることが非常に大切です。
1. 感染症のリスクと感染した時の対応方法
メトトレキサートは免疫抑制薬の一つです。免疫力を薬の力で下げることで、関節リウマチを治療します。これは関節リウマチの異常な免疫を下げる一方で、ばい菌と戦う正常な免疫力も低下させます。一般的に、薬の量が多いほど関節リウマチは改善しますが、同じだけ感染症のリスクが増えていきます。
具体的には「感染症にかかりやすい」、「特殊な感染症にかかることがある」、「感染症にかかった時に悪くなりやすい」といったリスクがあります。この中で最も怖いことが、感染症にかかった時に重症化することで、その対策として以下の注意事項を必ず心がけてください。
① メトトレキサートを飲むことを一時的にやめる(休薬する)
・感染症にかかったかもと思った時には、週1回のメトトレキサートを飲まないでください
(例) 熱がある、熱っぽい、だるい、咳が出る、お腹が痛い、気持ち悪い、皮膚が赤く痛い など
・感染か迷うとき、飲もうか飲まないか悩んだ時には、「飲まない」が正解です。関節リウマチが悪くなった場合は後から薬で治療できますが、感染症が悪くなった時には命に関わります。無理はしないでください。
・飲まなかったメトトレキサートはそのままにして、次の週に元気になっていた場合には再開して下さい
・同じ週の葉酸(フォリアミン)は内服しなくて問題ないです
② すぐに病院を受診する
・感染症にかかったかもと思った際には、すぐに病院を受診してください
・同じ発熱を起こす感染症でも「ウイルスの感染」か「細菌の感染か」によっても大きく治療が変わります
→ 当院では院内にある血液検査設備によって、感染症の有無や重症度を調べることができます
・感染してすぐに対応を始めることで、ばい菌が増える前に治療ができ、感染症が悪くなるリスクを大きく減らすことができます
③ 適切なワクチン接種
・これは事前の感染対策です。
・インフルエンザやコロナウイルスに感染すると免疫力が下がっている分、重症化する危険性があります。そのため、メトトレキサートなどの免疫抑制治療を受けている患者さんは、ワクチンの接種をお勧めしています
・メトトレキサートを飲んでいる状態のままでワクチンを接種すると、ワクチンの効果が下がるため、事前に医師への相談をお勧めします。
→ 当院かかりつけの患者さんは、受診せずにクリニック公式LINEからでも相談ができます
④ 事前の感染症のスクリーニング検査
・気が付かないうちに体に感染し、自身では気が付かないうちに保菌している可能性のある菌が何種類かいます。
(例) B型肝炎、C型肝炎、梅毒、結核、カビなど
・これらに気が付かないまま、メトトレキサートを開始して免疫抑制治療を始めると、特殊な感染症を起こすことがあります。そのため、可能な限り治療の前にこれらの感染症がないかを確認することが推奨されています
(医療保険の関係ですべての検査はできませんが、可能な範囲内で行うことが推奨されます)
2. メトトレキサートの副作用① (頻度は多いが軽症なもの)
メトトレキサートは細胞の分裂を抑えるため、細胞が活発に増える場所(口の中や胃腸の粘膜、血液を作る骨髄など)に影響を与えることがあります。これらの、副作用はメトトレキサートを飲んだ後の1〜2日に現れることが多いです。
〇 お腹の調子の変化(消化器系の副作用)
・吐き気や気持ち悪さ、嘔吐、下痢、胃の不快感などが比較的よく起こります
・口の中にできる口内炎や、口の中の痛みが生じることも多いです
・場合により、治りにくい歯肉炎を起こすこともあります
〇 体全体の不調
・頭痛、疲れやすさ(倦怠感)、集中力の低下などを起こすことも多いです
・髪の毛が抜ける脱毛を起こす可能性があります
〇 副作用を軽くする「葉酸(フォリアミン)」
・メトトレキサートのこれら副作用を軽くするために、前で記載した葉酸(フォリアミン)を飲んでいただきます
・副作用が強すぎる時には、メトトレキサートの量を調節したり、フォリアミンの量を増やして対応します
〇 副作用を大きく抑える注射「メトジェクト」
・2022年から日本でも「メトジェクト」というメトトレキサートの注射の薬が使用できるようになりました
・この薬は、これらメトトレキサートの副作用を大きく減らして、負担が少なく続けられます
→ 詳しくは「メトジェクト」を参照してください。
3. メトトレキサートの副作用② (頻度は多いが血液検査で分かるもの)
メトトレキサートは体の内部にも影響を与えます。
特に肝臓に大きな負担をかけることが知られています。メトトレキサートを飲みながら飲酒を行うと、二つの力で肝臓にダメージを与えるため注意が必要です。メトトレキサートを使われている方は、定期的に血液検査を行い、肝臓の数値を確認することで安全に使用できます。
また脱水や他の薬の影響などで腎臓の数値が悪くなったときには、メトトレキサートを体から出すことができなくなり、副作用が急激に進むことがあります。このような事態を防ぐためにも、定期的に血液検査を行うことが勧められています。
4. メトトレキサートを副作用③ (頻度は少ないが重症なもの)
メトトレキサートは頻度は少ないですが、特殊、かつ重症な副作用を起こすことがあり、これらを早期に発見して適切に対応することが大切です。
① 間質性肺炎
・間質性肺炎は、「肺炎」とついていますが菌の感染ではなく、免疫の力によって自身の肺を攻撃して破壊してしまう病気です。一般的には少しずつ病気が進行していき、残念ながら一度壊れてしまった肺が戻ることはありません。
・まれに、間質性肺炎の急性増悪として、急激に病気が進行して命に関わることもあります
・関節リウマチ自体でも間質性肺炎を起こすことがありますが、メトトレキサートの副作用でも間質性肺炎を起こすことがあります
<症状> 長く続く(風邪と違いよくならない)乾いた咳、息切れ、息苦しさを感じます
<対応方法>
・メトトレキサートを使用する前に、そもそも間質性肺炎があるかを確認します。間質性肺炎がある場合には、メトトレキサート以外の薬を用いて治療を開始します
・メトトレキサートを使用している患者さんは定期的に肺のレントゲン検査を行い、間質性肺炎を起こしていないか確認します。特に肺を横から見るレントゲンを行うことで、間質性肺炎の起こりやすい背中側をよくみることができます。
・風邪とは異なる、長く続く咳・息切れを感じた時には、すぐに主治医の先生にご相談ください
② 悪性腫瘍 (特にリンパ腫)
・関節リウマチと悪性腫瘍:そもそも、関節リウマチの患者さんは病気の活動性が高い状態が続くことによって、リンパ腫を含む特定の癌(悪性腫瘍)になりやすいことが知られています。
・メトトレキサートとリンパ腫:メトトレキサートの使用により、リンパ腫などの悪性腫瘍のリスクがわずかに増加することが指摘されています。これらはメトトレキサートを飲み始めて何十年経っても出現するリスクがあります。メトトレキサートの使用中に発生したリンパ腫は、半数程度はメトトレキサートを飲むのを中止しただけで自然に消えていくことがあります。その一方で、残りの半数は本格的な抗がん剤治療が必要となることがあるため、注意が必要です。
<対応方法>
・メトトレキサートを使用されている患者さんは、入浴時などにリンパ節が腫れていないか注意してみてください
・リンパ節の腫れが長く続く場合には、主治医にご相談ください
・そのほかのがん検診についても、健康診断でしっかりと受けるようにしてください
5. その他のメトトレキサートの注意点
① 脱水に注意
・体に入ったメトトレキサートは腎臓から尿として体の外に排出されます。脱水になるとメトトレキサートが体の中に残り、強い副作用を起こすことがあります。常に脱水にならないように水分補給を心がけてください。
・脱水になってしまった時には、メトトレキサートを飲むのを一時的にやめてください(休薬してください)
② 胸水・腹水・むくみに注意
・胸水や腹水がある患者さんがメトトレキサートを内服すると、その水の中に溶けることで、メトトレキサートの体外への排出が抑えらえることで、副作用が強くでることがあります。このような時には一時的にメトトレキサートを飲むのを中断する必要があります。
③ 妊娠は禁忌
・メトトレキサートを飲んでいる状態で妊娠をしてしまうと胎児に奇形が起きるとされています。
・メトトレキサートを内服してる患者さんは消して妊娠をしないように注意してください
・関節リウマチの治療をしつつ妊娠を希望される患者さんは、妊娠時でも安全に使える薬に変更します。メトトレキサートを最後に内服してから3か月休薬すると妊娠可能となります。ご相談ください。
当院ではメトトレキサートからメトジェクトなどの最新の薬まで使用して関節リウマチ治療に当たります。千葉で関節リウマチの治療が気になった方は、是非「こあら内科クリニック」にご相談下さい!
