乾癬性関節炎
乾癬性関節炎
乾癬性関節炎は、皮膚の病気である「乾癬(かんせん)」に合併して起こる関節炎です。
関節の痛みや腫れだけでなく、皮膚や爪、腱など全身に症状が現れることが特徴です。以前は「関節症性乾癬」とも呼ばれていました。
※背骨や骨盤に炎症が起きる「脊椎関節炎」については、別のページで詳しく解説しています
1. 乾癬性関節炎とは
乾癬性関節炎は、皮膚に赤い発疹や銀白色の付着物ができる「乾癬」という病気を持つ人に発症する、炎症性のリウマチ性疾患です。 本来は体を守るはずの免疫システムが、誤って自分の体を攻撃してしまうことで、関節や皮膚に炎症を引き起こします。「免疫が関節などを攻撃する」という点では関節リウマチと似ていますが、実際に攻撃される関節や治療に使われる薬は異なります。
2. どのくらいの人がなるか:有病率や疫学
・乾癬患者が関節炎を起こす割合
皮膚の乾癬がある患者さんのうち、およそ30%の人がこの関節炎を発症すると言われています
・発症のタイミング
多くの場合、皮膚の症状が先に出て、数年後に関節炎が始まります。しかし、約15%の人は関節炎が先に出たり、皮膚と関節の症状が同時に出たりすることもあります。
- 乾癬性関節炎を起こしやすい性別や年齢
男性と女性でなりやすさに大きな差はありません。30代から50代で発症することが多いですが、子供から高齢者まで幅広い年齢でみられます。
3. 症状の分類と特徴
乾癬性関節炎の症状は人によって様々ですが、主に以下の5つのタイプに分けられます。
- 指の第一関節の関節炎
指の爪に一番近い関節(DIP関節)が侵されます。これは関節リウマチにはあまり見られない特徴です。
- 少数の関節炎
手や足の左右非対称な、5か所以下の関節に炎症が起きます。
- 多発性関節炎
左右対称に5か所以上の関節が腫れます。関節リウマチと見分けがつきにくいタイプです。
- ムチランス関節炎
関節の骨が破壊され、指が短くなったり変形したりする、重症で稀なタイプです。
- 脊椎炎
背骨や骨盤の関節に炎症が起きます
※詳細は「脊椎関節炎」のページをご参照ください
■ その他の重要な特徴
・指炎:指の関節だけでなく、指全体が赤く腫れます。激しい場合にはソーセージ様と形容されます
・付着部炎:腱の付け根にある「付着部」と言われる部分の炎症です。 アキレス腱やかかと、足の裏などで痛みが出ます。
・爪の病変:爪に小さなくぼみができたり、爪が浮き上がったり、ボロボロになったりします。関節炎がある患者さんの80〜90%に見られ、爪の症状がある人は関節炎になりやすいと言われています。軟膏などで対処することが多いです。
4. 原因
はっきりした原因はまだ解明されていませんが、以下の要素が重なって発症すると考えられています。
・遺伝的要因
家族に乾癬や乾癬性関節炎の人がいると、発症しやすい傾向があります。
・免疫の異常
「TNF」や「インターロイキン(IL-17/IL-23など)」と呼ばれる、炎症を引き起こすタンパク質が過剰に作られることで、症状が悪化します。
- 環境要因
感染症、過度の肥満、身体的なストレス(ケガなど)、喫煙がきっかけになることがあります。
5. 治療
治療の進歩により、多くの選択肢があります。患者さんの症状の重さや、皮膚と関節どちらの症状が強いかによって使い分けます。
(1) 痛み止め/抗炎症薬(NSAIDsと言われる薬)
治療の基本となるのが、「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」と言われる解熱鎮痛薬です。一般的には鎮痛薬として使われますが、十分な量を定期的に(毎日)飲んでいただくことで炎症を抑える効果も発揮します。有名な薬では「ロキソプロフェン」などがありますが、長期に飲んでいただくために「セレコキシブ」などを使うことが多いです。
(2) 抗リウマチ薬(飲み薬)
手足の関節に炎症を起こすタイプの場合には、関節リウマチに使用される抗リウマチ薬が効くことが多いでうす。具体的には、「メトトレキサート」などが代表的です。免疫の働きを調節し、関節の腫れや痛みを改善します。皮膚の症状にも効果が期待できるものもあります。
(3) 生物学的製剤
飲み薬で効果が不十分な場合や、症状が中等度から重度の場合に使用される注射などの薬です。体の中の炎症の原因物質(サイトカイン)を直接狙い撃ちして抑え込みます。関節の破壊を食い止め、劇的な効果が期待できますが、総じて価格が高い点がネックです。
乾癬性関節炎では、主に4つのタイプが使われます。
1. TNF阻害薬
最も長く使われている自己注射の生物学的製剤です。関節の炎症を強力に抑え、骨が壊れるのを防ぎ、皮膚症状にも効果があります。生物学的製剤の中では比較的価格が安いため、長期にわたって使用しやすいです。
2. IL-17阻害薬
皮膚の症状に対して非常に高い効果があり、関節炎もしっかり抑えます。皮膚症状が重い場合に選ばれることが多いです。
3. IL-23阻害薬
皮膚症状に優れており、関節炎にも効果があります。注射の頻度が比較的少ない薬剤もあります。
4. JAK阻害薬
生物学的製剤と同じくらい高い効果を持つ、新しい飲み薬です。注射が苦手な人にはよい選択肢ですが、価格が高く、帯状疱疹になるリスクが高まります
6. 乾癬性関節炎を治療する理由
単に「痛いから」だけではありません。治療せずに放置すると、以下のようなリスクがあります。
・関節の変形と機能障害
炎症が続くと骨や軟骨が壊れ、関節が変形して動かなくなってしまいます。一度壊れた関節は元に戻りません。
・合併症のリスク
乾癬性関節炎の患者さんは、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中などの心血管系の病気や、糖尿病、肥満になりやすいことがわかっています。炎症を抑えることは、これらの全身の病気のリスクを下げることにもつながります。
7. 治療目標
現在の治療の目標は、以下の2つです。
- 寛解(かんかい)または低疾患活動性
痛みや腫れが完全にない状態(寛解)、あるいはごくわずかな状態を目指します。
- 生活に質(QOL)の維持
関節の破壊を防ぎ、仕事や趣味など、病気になる前と同じような日常生活を送れるようにします。
特に「目標達成に向けた治療(Treat to Target)」という考え方が重要で、目標(寛解など)を決め、達成できるまで定期的に薬を見直していきます。
詳しくは「治療戦略の基本:「T2T」」
8. 病気の見通し:予後
昔は「軽い病気」と思われていましたが、実際には関節破壊が進みやすい病気であることがわかってきました。しかし、近年は生物学的製剤などの登場により、早期に適切な治療を開始すれば、関節の破壊を防ぎ、普通の人と変わらない生活を送れる可能性が非常に高くなっています。 逆に、診断が遅れたり、炎症が強いまま放置したりすると、関節のダメージが進んでしまうため、早めのリウマチ専門医の受診が大切です。
9. 皮膚科との連携について
乾癬性関節炎は、「皮膚」と「関節」の両方に症状が出る病気な一方で、同時に治療できないことがある点が厄介です。具体的には、
・皮膚症状が悪い時期と、関節症状が悪い時期がずれることがある
・「皮膚にはよく効くが関節には効きにくい薬」や、その逆の薬もある
(ただし生物学的製剤は一つしか使用できないためどちらかを優先するしかない)
そのため、皮膚科医と膠原病内科医が連携して治療することが非常に重要です。皮膚の状態を良くすることで関節炎が見つけやすくなったり、関節の治療薬が皮膚もきれいにしたりと、両方の視点から最適な治療法を選ぶことができます。 皮膚に乾癬がある方で、「関節が痛い」「指が腫れている」「かかとが痛い」などの症状がある場合は、担当の皮膚科医に相談するか、リウマチ専門医を受診してください。
当院では膠原病内科(リウマチ科)の専門医と指導医の資格を持った医師が治療にあたります。また、生物学的製剤などの最新の薬まで駆使して乾癬性関節炎の治療に当たります。千葉で乾癬性関節炎の診断・治療が気になった方は、是非「こあら内科クリニック」にご相談下さい!
