皮膚筋炎・多発性筋炎
多発性筋炎・皮膚筋炎
ここでは、全身の筋肉・肺などが壊れる多発性筋炎・皮膚筋炎という二つの膠原病について解説します。
1. 多発性筋炎・皮膚筋炎とは
多発性筋炎と皮膚筋炎は、「特発性炎症性筋疾患」と呼ばれる病気のグループに含まれます。これらは、自分の免疫システムが誤って自分の体を攻撃してしまうことによって、筋肉に炎症が起きる病気です。
主な特徴は、体の中心に近い筋肉(二の腕や太もも、首、胴体など)の筋力が低下することと、筋肉の炎症を示す検査結果が出ることです。これらの病気は、筋肉だけでなく、皮膚、肺、心臓など、他の臓器にも症状が出ることがある全身性の病気で、特に肺の「間質性肺炎」が問題になることが多いです。
2. 多発性筋炎と皮膚筋炎の違い
この二つの病気の最大の違いは「特徴的な皮膚症状があるかどうか」です。
- 皮膚筋炎(Dermatomyositis;DM)
筋肉の炎症による筋力低下に加えて、特徴的な皮膚の発疹が現れます。 - 多発性筋炎 (Polymyositis: PM)
皮膚の症状はなく、筋肉の炎症が主な症状です。
多発性筋炎と皮膚筋炎の両方にいえることですが、この病気を起こす自己抗体(抗〇〇抗体)の種類により、症状の出方や治療の効きやすさ・重症度などがある程度予想できます。
また、皮膚筋炎の中には「無筋症性皮膚筋炎(CADM)」と呼ばれるタイプがあります。これは、皮膚筋炎の特徴的な皮膚症状はあるものの、筋力低下がほとんど見られない、あるいは全くない状態を指します。このような患者さんは「間質性肺炎」と呼ばれる、肺が壊される病気を合併しやすく、むしろ注意が必要とされています。
また、近年の医学の進歩により、「多発性筋炎」と診断されていた患者さんが、別の病気の方が分類学的に正しい可能性があるといわれています。しかしまだ確立された概念とは言えないのが現状です。
3. どのくらいの人がなるのか・どのような人がなりやすいか
- 頻度:年間に人口10万人あたり約1人が発症すると推定されています。
- 性別:男性よりも女性に多く発症しますが、他の膠原病よりは男女比の差が少ないです。
- 年齢:どの年齢でも発症する可能性がありますが、50代で発症のピークが見られます。
- 小児:子どもが発症する場合もあり、「若年性皮膚筋炎」や「若年性多発性筋炎」と呼ばれます。成人が発症する場合と比較して少し病気の特徴が異なります
4. 原因
現時点では、なぜこの病気になるのか完全には解明されていません。しかし、本来はウイルスや細菌から体を守るはずの免疫システムに異常が生じ、自分の筋肉や皮膚、その他の組織を攻撃して炎症を引き起こしてしまうと考えられています。
5. よくある臓器病変・症状
この病気は筋肉だけでなく、全身にさまざまな症状が現れます。
(1) 筋肉の症状
最も一般的な症状は、左右対称的な筋力の低下です。特に体の中心に近い大きな筋肉が影響を受けます。
- 具体的な症状:椅子から立ち上がるのがつらい、階段を上るのが大変、重い荷物が持てない、洗濯物を干すときなどに腕を上げにくい、といった症状が数週間から数ヶ月かけて徐々に現れます。
- 痛み:筋肉痛や筋肉の圧痛(押すと痛い)が起こることもありますが、病気の進行が急激でない場合には痛みがない場合もあります。
(2) 皮膚の症状(皮膚筋炎の場合)
皮膚筋炎では、以下のような特徴的な発疹が現れます。これらは日光(紫外線)に当たると悪化することがあり、強いかゆみを伴うこともあります。
- ヘリオトロープ疹:上まぶたが紫色っぽく赤くなり、腫れぼったくなる症状です。
- ゴットロン丘疹:手の指の関節(拳や指の背側)にできる、赤紫色で少し盛り上がったカサカサした発疹です。
- ショール徴候:肩から背中の上部にかけて、ショールをかけたような形で広がる赤い発疹です。
- Vネック徴候:胸の前のVネックの服で開く部分にできる赤い発疹です。
- 機械工の手:手の指先や側面がガサガサに荒れて、ひび割れたり硬くなったりする症状です。まるで手作業をする職人の手のように見えることからこう呼ばれます。
- 頭皮:頭皮がかゆくなったり、フケのようなカサカサが出たりすることがあり、脱毛を伴うこともあります。
(3) 肺の症状(間質性肺炎)
多発性筋炎・皮膚筋炎の患者さんの約20〜80%に「間質性肺炎」という肺の病気が合併します。これは免疫の影響で肺が炎症を起こして壊される病気です。
- 症状:咳(痰が絡まない乾いた咳)や、動いた時の息切れが現れます。
- 急速な進行:特に「抗MDA5抗体」という特定の抗体を持っている患者さんでは、急速に進行する間質性肺炎を起こしやすく、命に関わることがあるため注意が必要です。
(4) その他の症状
- 嚥下障害:喉や食道の筋肉が弱くなり、食べ物を飲み込みにくくなったり、鼻へ逆流したりすることがあります。これが原因で誤嚥性肺炎を起こすこともあります。
- 心臓:心筋炎(心臓の筋肉の炎症)や不整脈が起こることがあります。
- 関節:関節の痛みや腫れが出ることがあります。
(5) 悪性腫瘍(がん)の合併
特に成人の皮膚筋炎の患者さんでは、一般的な人よりもがん(悪性腫瘍)が見つかるリスクが高いことが知られています。そのため、診断時にはがんの検査も行われます。
6. 臓器病変ごとの治療方法
治療の目標は、筋力を回復させ、再発を防ぎ、副作用を最小限に抑えることです。
(1) 筋肉や全身に対する治療
ステロイド(副腎皮質ホルモン)治療:治療の中心となる薬です。炎症を強力に抑える作用があります。飲み薬として使われることが多く、症状が重い場合は一時的に点滴を使うこともあります。
- 免疫抑制薬:ステロイド薬だけで効果が不十分な場合や、ステロイド薬を減らすために、タクロリムスやメトトレキサートなど様々な免疫抑制薬を使用することが多いです。
- 免疫グロブリン療法:飲み込みにくさが強い場合や、症状が重い場合には、免疫グロブリンという血液製剤を点滴する治療が行われることがあります。効果は一時的ですが、免疫力を下げない治療の選択肢として挙げられます。
(2) 皮膚に対する治療
- 遮光(紫外線対策):日光で悪化するため、日焼け止めの使用や、帽子・長袖の着用など、徹底した紫外線対策が重要です。日焼け止めは効果が強いものを、汗をかくたびに塗りなおすことが大切です。
- 塗り薬:ステロイドの塗り薬などが使われることがあります。
(3) 肺(間質性肺炎)に対する治療
間質性肺炎がある場合は、ステロイド薬に加えて、より強力な免疫抑制薬(タクロリムスやミコフェノール酸モフェチルなど)を使用することがあります。
(4) リハビリテーション・誤嚥の防止
筋力が落ちて関節が固まるのを防ぐため、診断後早期からリハビリテーションを行うことが推奨されています。飲み込みにくい症状がある場合は、ベッドの頭側を高くして寝たり、食事にとろみをつけたりする工夫が必要です。
7. 治療目標
治療の目標は、筋肉の酵素の値(CK値など)を正常化させ、筋力を元の状態に戻すことです。また、間質性肺炎などの合併症をコントロールし、日常生活に復帰することを目指します。 薬は長期間続ける必要がありますが、症状が落ち着けば(寛解状態)、徐々に薬の量を減らしていき維持します。
8. 特定疾患の申請について
多発性筋炎・皮膚筋炎は国の指定難病に該当する病気で、「指定難病医療費助成申請」を行い認定をうけることで、この病気に対する治療費用については国からの補助をうけることができようになります。ただし認定を受けるためには「多発性筋炎・皮膚筋炎の診断と重症度」が認定基準を満たす必要があります。
認定を受けるために必要な書類は複数ありますが、その中でも「臨床調査個人票」は主治医の先生に書いてもらう必要があります。多発性筋炎・皮膚筋炎の患者さんで、ご自身が医療費助成を満たすか気になる方や、申請について気になる方は、主治医先生にご相談ください。
※ 臨床個人調査票に関わる文章料は公費助成の対象にはなりません
※ 書類を提出しても認定されるかは審査結果によります
9. 病気の見通し
病気の経過は人によってさまざまです。治療によく反応して症状が改善する人もいれば、治療が難しい場合もあります。特に間質性肺炎を悪化させないことが大切と言われています。
当院では膠原病内科の専門医と指導医の資格を持った医師が治療にあたります。
千葉で多発性筋炎・皮膚筋炎の診断・治療が気になった方は、是非「こあら内科クリニック」にご相談下さい!
