糖尿病
糖尿病
糖尿病は、今や「国民病」とも呼ばれるほど身近な病気です。しかし、その正体や怖さ、そして適切な治療の重要性については、意外と詳しく知られていないこともあります。このページでは、糖尿病の基礎知識から最新の治療の考え方まで、わかりやすく解説します。
1. 糖尿病とはどのような病気か
糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度(血糖値)が日常的に高くなってしまう病気です。
私たちが食事をすると、栄養素の一部はブドウ糖に分解され、血液に乗って全身に運ばれます。このブドウ糖は、すい臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きによって細胞の中に取り込まれ、私たちが活動するためのエネルギー源となります。
しかし、糖尿病になると、このインスリンが十分に分泌されなくなったり(インスリンの分泌低下)、分泌されていても細胞でうまく働かなくなったり(インスリン抵抗性)します。その結果、ブドウ糖が細胞の中に入れず血液中にあふれてしまい、血糖値が高い状態が続いてしまうのです。
初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多いですが、血糖値が高い状態を放置すると、喉が渇く、尿の回数や量が増える、急に体重が減る、目がかすむ、手足がしびれるといった症状が現れることがあります。最終的には「失明する」「腎臓透析になる」「足先指先の感覚がなくなる」などの取り返しがつかない症状を起こします。
特に糖尿病でダメージが出やすい臓器は「しめじ」と言われ、「し:神経」「め:眼」「じ:腎臓」が徐々に壊れていくとされています。
2. 糖尿病の有病率とどのくらいの人がなっているか
糖尿病は日本だけでなく世界的にも増加傾向にあり、非常に多くの人が患っています。
日本国内には現在、約1,100万人の糖尿病患者さんがいるとされており、過去と比べてもかなり多くの患者さんがいます。特に60歳代では男性の25%、女性の11%が糖尿病とされ、70歳以上では女性でも約20%が糖尿病と言われています。年齢と共に増えていく一方で、発症に気が疲れずに放置されていることが多いのも現状です。また、近年では子供や若年の方の肥満が増えており、若い世代での糖尿病発症も増えてきており、世界的な健康課題となっています。
3. 糖尿病の種類(1型糖尿病と2型糖尿病)
糖尿病は、その原因や発症の仕組みによって主に「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分けられます。
〇 1型糖尿病
・特徴:すい臓にあるインスリンを作る細胞が壊れてしまい、インスリンがほとんど、あるいは全く出なくなります。
・原因:免疫システムが誤って自分の細胞を攻撃してしまう「自己免疫」が主な原因と考えられています。遺伝的な体質にウイルス感染などの環境要因が加わって発症すると考えられていますが、生活習慣が原因ではありません。
・発症時期: 子どもや若者に多く見られますが、大人になってから発症することもあります。
・治療:体の中ではインスリンが作ることができないため、注射などで体の外からインスリンを補う治療(インスリンの自己注射)が必要です。
〇 2型糖尿病
・特徴:インスリンの分泌が減ったり、インスリンの効きが悪くなったりするタイプです。日本の糖尿病患者さんの大部分(90%以上)はこちらです
・原因:遺伝的な体質(家系に糖尿病の人がいるなど)に加え、食べ過ぎ、運動不足、肥満といった生活習慣や加齢が重なって発症します。
・発症時期:中高年に多いですが、近年は若年層でも増えています。
・状態:初期は症状がないことが多く、健康診断などで偶然見つかることがよくあります。
・治療:軽症から中等症の場合は飲み薬を中心に治療をされます。重症の場合にはインスリンの注射を使用することもあります。
このほか、ステロイド治療によって発症する「ステロイド糖尿病」や、妊娠中に初めて発見される「妊娠糖尿病」などがあります。
4. 糖尿病の原因とリスクファクター
なぜ糖尿病になるのでしょうか。特に2型糖尿病の発症には、以下のような多くの要因が関わっています。
・肥満:最も重要なリスク要因です。内臓脂肪が増えるとインスリンの効きが悪くなり(インスリン抵抗性)、血糖値が高くなりやすいです
・運動不足:体を動かさない生活は、筋肉でのブドウ糖の消費を減らし、糖尿病の原因になります。
・食生活:糖分の多い清涼飲料水の飲みすぎや、加工食品の摂りすぎ、野菜不足などはリスクを高めます。
・遺伝(家族歴):親や兄弟姉妹に糖尿病の人がいる場合、発症リスクは2〜3倍高くなるといわれています。
・年齢:加齢とともにすい臓の働きが弱まり、筋肉量も減るため、血糖値が上がりやすくなります。実際年代が上がるにつれて糖尿病の有病率が増えるというデータがあります。
・その他:高血圧、脂質異常症、喫煙、睡眠不足なども糖尿病のリスクを高めることがわかっています。
5. なぜ治療しなければならないのか:糖尿病の合併症について
「痛みもないし、元気だから大丈夫」と糖尿病を放置するのは非常に危険です。糖尿病の本当の怖さは、高い血糖値が全身の血管や神経を傷つけ、様々な「合併症」を引き起こすことにあります。
〇 三大合併症(細小血管障害)
細い血管が傷つくことで起こる、糖尿病に特有の合併症です。最初にもお伝えした通り、「しめじ」と言われ、「し:神経」「め:眼」「じ:腎臓」が徐々に壊れていきます。
- 糖尿病網膜症(目)
目の底にある網膜の血管が傷つき、視力が低下します。悪化すると失明することもあります。糖尿病の患者さんは年1回の眼科受診が推奨されています。
- 糖尿病腎症(腎臓)
腎臓のろ過機能が低下します。進行すると人工透析が必要になることがあり、実際に日本で人工透析となる原因の病気の1位が糖尿病です。定期的な尿検査で尿蛋白の確認が推奨されます。
- 糖尿病神経障害(神経)
手足のしびれや痛み、感覚の低下が起こります。足の傷に気づかず、壊疽(えそ)して足を切断しなければならなくなることも多いです。
〇 大血管障害(動脈硬化)
太い血管が硬く狭くなる動脈硬化が進行しやすくなります。動脈硬化が進行すると、全身の様々な血管が詰まり、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈閉塞を起こします。
当院では動脈硬化を測定する専門の医療機器を用意しています。予約なく検査可能で、検査時間は5分程度、検査費用は(3割負担で)300円程度です。気軽にご相談ください。
詳しくは「動脈硬化」をご覧ください
〇 その他
これらに加え、糖尿病の人は骨がもろくなり骨折しやすくなったり、感染症にかかりやすくなったり、歯周病が悪化しやすかったりすることも知られています。また、がんや認知症のリスクが高くなることも報告されています。
治療の目的は、単に血糖値を下げることだけではなく、これらの合併症を防ぎ、健康な人と変わらない寿命と生活の質(QOL)を保つことにあります。
6. 糖尿病の治療方法
糖尿病の治療は、タイプや進行度、患者さんの年齢や生活環境に合わせて個別に行われますが、基本となるのは以下の3つです。
- 食事療法
すべての糖尿病治療の基本です。
・適正なエネルギー摂取:食べ過ぎを防ぎ、適正体重を目指します。
・栄養バランス:野菜、海藻、きのこなどを積極的に摂り、炭水化物、タンパク質、脂質のバランスを整えます。
・規則正しい食事:まとめ食いや欠食を避け、できるだけ決まった時間に食事を摂るようにします。
- 運動療法
運動には、血液中のブドウ糖を消費し血糖値を下げる効果と、インスリンの効きを良くする効果があります。
・有酸素運動:ウォーキングや水泳などを週に150分以上行うことが推奨されています。
・レジスタンス運動(筋トレ):筋肉を増やすことで基礎代謝を上げ、糖の消費を促します。
- 薬物療法
食事や運動だけでは血糖値が十分に下がらない場合や、1型糖尿病の場合には薬を使います。
〇 飲み薬(経口血糖降下薬)
・メトホルミン:肝臓で糖が作られるのを抑えたり、インスリンの効きを良くしたりします。他の薬と併用することで真価が発揮されます。体調が悪い時や脱水の時に飲むとより体調が悪くなるため、休薬が必要です。
・SGLT2阻害薬: 尿と一緒に糖を排泄させることで血糖値を下げます。体重減少効果や、心臓や腎臓を守る効果も期待されています。
・DPP-4阻害薬: 血糖値が高い時だけインスリンの分泌を促す薬です。比較的安全に使用できます
・その他、様々な作用の薬があり、患者さんの状態に合わせて選択されます。
〇 注射薬
・インスリン製剤:不足しているインスリンを補います。1型糖尿病では必須ですが、2型糖尿病でも血糖値が高い場合や手術前後などに使われます。
・GLP-1受容体作動薬:インスリンの分泌を促し、食欲を抑える効果もあります。体重減少効果が期待でき、心血管疾患のリスクを下げる効果があるものもあります。
7. 治療の目標
治療の最大の目標は、合併症の発症や進行を食い止めることです。そのために、以下の数値を管理します。
〇 血糖コントロールの目標:HbA1c
・HbA1cとは:過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖の状態を示す値です。
・一般的な目標値:7.0%未満です。この値を維持することで、合併症のリスクを大幅に減らせることがわかっています。
・若くて元気な方:6.0%未満を目指すこともあります。
・高齢の方や低血糖が心配な方:8.0%程度など、少し緩やかな目標にすることもあります。
〇 その他の管理目標
血糖値だけでなく、動脈硬化を防ぐために以下の管理も重要です。
・血圧:一般的には 130/80 mmHg未満 を目指します。
・脂質:LDLコレステロールなどを適正範囲に保ちます。
・体重:肥満のある方は、現体重の5〜10%程度の減量を目指すだけでも、血糖値や血圧の改善に大きな効果があります。
・禁煙:タバコは血管を傷つけ、心筋梗塞や脳卒中のリスクを跳ね上げるため、禁煙は極めて重要です。
まとめ
糖尿病は、初期には症状がなくても、水面下で血管を傷つけ続ける病気です。しかし、早期に発見し、食事・運動・必要に応じた薬物療法によって血糖値を良い状態に保てば、健康な人と変わらない生活を送ることができます。
「もしかして?」と思ったら、まずは医療機関で検査を受けましょう。そして、診断された場合は、主治医や医療スタッフと相談しながら、ご自身の生活に合わせた無理のない治療を続けていくことが大切です。
糖尿病の治療薬はいくつも種類がありますが、どの薬を用いるかによって、血糖値を下げると共に得られる効果が異なります。薬によっては「腎臓を守る作用」や「体重を減らす作用」などがあります。
また、治療の目的である「動脈硬化」を定期的に確認して、治療がうまくいっているかを確認することが大切です。
当院では動脈硬化の測定や、無料の生活習慣病の相談も行っています!
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