肺炎(市中肺炎)
肺炎(市中肺炎)について知っておきたいこと
1. 市中肺炎とは
肺炎は、医学的には肺の奥にある小さな空気の袋(肺胞)などに炎症が起こる病気です。
市中肺炎とは、その中でも、病院や介護施設の中ではなく、日常生活を送る地域社会の中で感染して発症する肺炎のことを指します。つまり皆さんが経験するほとんどの肺炎が、この市中肺炎に当てはまります。
症状は軽いものから命に関わる重いものまでさまざまです。
軽い肺炎の場合は、症状がありながらも日常生活を送れることもありますが、重症化すると呼吸が苦しくなり、緊急の治療が必要になることもあります。
主な症状としては、咳、痰、発熱、深呼吸をしたときの胸の痛み、息苦しさ、寒気や震えなどがあります。
ここではこの市中肺炎について解説します。
2. 市中肺炎の種類
市中肺炎は、原因や特徴によっていくつかの種類に分けられます。
定型肺炎
一般的な細菌が原因で起こる、いわゆる典型的な肺炎です。
急激に症状が現れ、突然の高熱や寒気、黄色や緑色の痰を伴う咳、特定の場所の胸の痛みなどを起こすことが多いです
非定型肺炎
一般的な細菌とは異なる、マイコプラズマやクラミジアといった特殊な病原体が原因となる肺炎です。症状は比較的ゆっくりと進み、のどの痛み、怠さといった風邪のような症状から始まり、後から頑固な乾いた咳が続くことが多いです。
ウイルス性肺炎
インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどのウイルスが原因となる肺炎です。またウイルス性肺炎には細菌性肺炎も合併しやすいとされています。
誤嚥性(ごえんせい)肺炎
ヒトの口の中には誰しも多くの細菌が住み着いています。これらや胃の分泌物が、誤って気管から肺に入り込むことで起こる肺炎です。飲み込む力が弱くなった高齢の方や、脳卒中の後遺症がある方などに多く見られます。繰り返し起こしやすいことに注意が必要です。
3. 有病率や疫学
市中肺炎はありふれた病気であり、日本中で多くの人がかかっています。大人では、年間1000人あたり約16人~23人が発症すると推定されています。
肺炎にかかるリスクは年齢とともに高くなり、特に65歳以上の高齢者で急激に増加します。
また、冬の寒い時期に増える傾向があり、女性よりも男性に多く見られます。
持病(糖尿病、心臓の病気、慢性的な肺の病気など)がある方や、タバコを吸う方、大量にお酒を飲む方は、肺炎にかかるリスクがさらに高くなります。
4. 原因
市中肺炎の原因となる病原体は100種類以上報告されていますが、その多くは特定の代表的な病原体によって引き起こされます。
細菌
最も多い肺炎の原因が細菌です。その中でも最も代表的な原因菌は「肺炎球菌」です。ワクチンがすでに開発されているため、「肺炎球菌ワクチン」を定期的に接種することで重症化を予防することができ、非常に有効です。
そのほか、インフルエンザ菌やモラクセラ・カタラーリスなどが原因となることもあります。
どの細菌が肺炎を起こしているかは、「喀痰培養検査」という痰の検査で同定することができます。
非定型細菌
「マイコプラズマ」や「クラミジア」、「レジオネラ」などが含まれます。
ウイルス
「インフルエンザウイルス」や「新型コロナウイルス」、「RSウイルス」、「ライノウイルス」などが有名です。
実際には、ウイルスと細菌の両方に同時に感染しているケースも少なくありません。有名なものとしては、インフルエンザにかかった後に細菌による肺炎を合併することが多いです。
ただし、ウイルスは無数に存在しているため、詳しい検査を行っても原因となる病原体が特定できないことも多くあります。
5. 肺炎を疑った時の検査
肺炎が疑われる場合、本当に肺炎かどうか、重症度はどのくらいか、原因となっている病原体は何かを調べるために、いくつか検査を組み合わせて行います。
画像検査
肺炎の診断を確定するために最も重要な検査です。
胸部エックス線検査は比較的被ばく量も少なく、肺炎の可能性が疑われた際に最初に行う基本的な検査です。肺に影がないかを確認します。
入院レベルの肺炎や、肺炎以外の可能性を考えた際には、より詳しい検査として肺のCT検査があります。
血液検査
血液検査で全身への影響や炎症の強さを評価します。具体的には以下の項目を確認します
白血球数(WBC)
感染した微生物と戦うために増加します。
肺炎にかかると数時間で増えるため、発症してすぐでも判定ができます。
注意点として、増え方には個人差が多く、重症度の判定には使いにくいです
炎症反応(CRP)
こちらも炎症(体が何かと戦う時)で上昇します。
感染の重さに応じて数値が変化するため、重症度判定に役立ちます。
原因となる微生物の種類によっても上がり方が異なるため、その点も参考になります。
注意点として、数値が上がるのに時間がかかるため、感染初期では低く見積もられることがあります。
腎機能・肝機能の数値
脱水状態になっていないか、腎臓や肝臓などの他の臓器に負担がかかっていないかを調べます。
入院が必要かの判定にも用いられます。
抗菌薬は腎臓や肝臓の数値により調節が必要な薬がほとんどです。量の調節のためにも必須です。
当院(こあら内科クリニック)は、クリニックとしては珍しく、院内に採血分析機器を設置しています。
そのため、採血して数分で「白血球」「炎症反応」が確認でき、肺炎の診断をより早期に行い、すぐに治療を行うことができます。
当院の血液検査機器
数分で「白血球数」や「CRP」を測定できます
培養・微生物検査
どのような微生物が肺炎を起こしているかに応じて治療方針が大きく変わります。
これらを調べる検査が以下になります。
喀痰培養検査
肺炎のほとんどは細菌によって引き起こされます。
どの細菌が肺炎を起こしているかによって使用される抗菌薬が変わります。
また耐性菌という特定の抗菌薬が効かない細菌も近年増えてきています。
これらを確認する検査が「喀痰培養検査」で、安全に治療を行うために非常に重要になります。
容器をお渡しするので、そこに痰を取って入れていただきます。
ウイルス検査
ウイルスが肺炎を起こすことは決して多くありませんが、新型コロナウイルスをはじめ、インフルエンザウイルスなども肺炎を起こします。抗原検査やPCR検査を行います。
6.入院の判断
市中肺炎と診断された場合、私たち医師は患者さんの症状の重さや健康状態を総合的に評価し、自宅で薬を飲んで治す(外来治療)か、入院して治療を行うかを判断します。
入院が必要と判断した際には、周辺の医療機関に受診のご相談を行いますのでご安心ください。
7.治療方法
原因となる病原体に合わせた薬の治療が基本となります。
細菌による肺炎が疑われる場合は、細菌を死滅させる「抗菌薬」を使用します。
外来で治療する場合は飲み薬が処方され、通常は5日間から7日間ほど服用します。
入院して治療する場合は、点滴を使って直接血管から抗菌薬を投与します。
インフルエンザや新型コロナウイルスなどのウイルスが原因とわかった場合は、それぞれのウイルスに対する抗ウイルス薬が使われることがあります。
治療を始めると、多くの人は3日から5日程度で熱が下がり、体調が良くなり始めます。
ただし抗菌薬が効きにくい耐性菌の肺炎の場合や、免疫力が低下している患者さん(免疫を下げる治療を行っている方、ご高齢の方)の場合、肺に病気を抱えている患者さん(たばこを吸っている方、間質性肺炎を持っている方)などは、適切な薬を使用しても悪化することが大いにあります。
常に「発熱」「息苦しさ」「咳や痰の量」などに注意していただき、少しでもおかしい、悪くなったかも、と思った際には再び病院を受診することが大切です。
8.子供の肺炎
子ども、特に小さなお子さんも肺炎にかかることがよくあります。
小児の肺炎には、年齢によって原因や特徴に違いがあります。
原因
5歳未満の小さな子どもの肺炎は、RSウイルスやインフルエンザなどの「ウイルス」が原因であることが最も多いです。一方、5歳以上の子どもになると、マイコプラズマなどの非定型細菌や肺炎球菌といった細菌が原因になることが増えてきます。
症状の特徴
熱や咳だけでなく、呼吸の仕方に注意が必要です。
呼吸の回数が異常に速くなる(頻呼吸)、息を吸うときに肋骨の間や首の付け根がペコッとへこむ(陥没呼吸)、小鼻をピクピクさせて息をする(鼻翼呼吸)、息を吐くときに「うーん」とうめき声をあげる、といったサインは、呼吸が苦しいという危険な兆候です。
治療と入院
大人の場合と同様に、軽症であれば自宅で飲み薬を飲むなどの治療を行います。
しかし、生後3〜6ヶ月未満の赤ちゃんの場合や、酸素が足りない場合、水分や食事がとれずに脱水になっている場合、呼吸が非常に苦しそうな場合は、入院しての治療が必要になります。
8.皆さん自身で注意いただくこと
肺炎は予防と日々の体調管理が非常に重要です。以下の点に注意して生活しましょう。
ワクチンの接種
医師が推奨するワクチンを受けることが、重い肺炎を防ぐ有効な手段です。
インフルエンザワクチンは毎年接種することが推奨されます。
また、65歳以上の高齢者や、持病がある方には、肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されています。
新型コロナウイルスのワクチンも予防に役立ちます。
禁煙
タバコを吸う人は肺炎にかかるリスクが高くなります。
禁煙することは、肺炎予防の非常に重要なステップです。
感染対策の徹底
こまめに石鹸と水で手を洗うか、アルコールベースの消毒液を使うことで、病原体が体の中に入るのを防ぐことができます。
健康的な生活習慣
十分な睡眠・休養をとり、水分をしっかりとることで、体の免疫力を保ちましょう。
口の中の清潔
口の中の細菌が肺に入って起こる誤嚥性肺炎を防ぐため、毎日の歯磨きやうがいなど、口の中を清潔に保つことも大切です。
持病の管理
糖尿病や心臓の病気、ぜんそくなどがある方は、普段からその病気の治療をしっかりと行い、状態を安定させておくことが肺炎の予防につながります。
当院ではレントゲン検査のほか、クリニックとしては珍しい院内の血液検査機器があり、肺炎の診断を速やかに行えます。
千葉(幕張)で肺炎が気になった方は、是非「こあら内科クリニック」にご相談ください。
