脂肪肝
当院では脂肪肝についての超音波機器を用いた専門的な測定方法「ATI(Attenuation Imaging)」を実施可能です。検査は数分で実施でき、脂肪肝の度合いを数値で判定できます。費用は(3割負担で)600円ほどです。気になる方は気軽にご相談ください。
(医師が行う検査なため、外来が混雑している時には検査が行えない時もあります)
また、当院では肥満・生活習慣病の無料相談を行っております。脂肪肝に関するご相談もこちらから受けています。予約ページから相談予約が可能です。ご気軽にご相談ください
脂肪肝とは
健康診断で「脂肪肝」と言われたことはありませんか?「お酒を飲まないから関係ない」と思っている人も多いかもしれませんが、実はお酒をあまり飲まない人でも脂肪肝になることが増えています。脂肪肝は、肝臓の細胞の中に中性脂肪などが過剰にたまってしまう病気です。肝臓の細胞の5%以上に脂肪がたまっている状態を指します。これを放置すると、将来的に肝硬変や肝臓がん、さらには心臓病などのリスクが高まることがわかっており、決して「ただ脂肪がついただけ」と軽く見てはいけない病気です。
1. どのくらいの人がなっているか:有病率と疫学
日本で脂肪肝の患者さんは約3,000万人ほどいるとされており、食事文化の欧米化と共に増加しています。日本人の約30%が脂肪肝を罹患しているとされ、女性よりも男性に多いとされています。50歳台の男性の罹患率が最も高く、2人に1人が脂肪肝とも言われています。また脂肪肝のみを持っている方は決して多くなく、肥満や糖尿病や脂質異常症を持つ人が増えていることと関係しています。
太っている人に多いのはもちろんですが、実は「痩せている人」でも脂肪肝になることがあり(痩せ型脂肪肝)、太っていない人の5〜20%に脂肪肝が見つかるというデータもあります。
2. 脂肪肝の名前と分類について
これまで、お酒をあまり飲まない人の脂肪肝は「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH/NAFLD)」と呼ばれていました。しかし、最近になって、この病気の本質は「代謝の異常」にあることが重視され、2024年に「代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)」と名前が変わりました。特にこの中で肝炎(肝臓が壊れている状態)を合併している場合には「代謝異常関連脂肪肝炎(MASH)」という名前になりました。
脂肪肝は、肥満とアルコールが与えている影響の強さによって、いくつかに分類されます。
〇 代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)
お酒をほとんど飲まない(1日あたり男性30g未満、女性20g未満)人で、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常などの肥満のリスク要因を少なくとも1つ持っている場合の脂肪肝です。これが現在、最も一般的な脂肪肝です。
〇 MetALD
MASLDの条件(肥満のリスク)に加え、お酒を「まあまあ飲む」(1日あたり男性30〜60g、女性20〜50g)人の脂肪肝です。代謝異常とお酒の両方が原因となっているタイプです。
〇 アルコール性肝障害(ALD)
お酒をたくさん飲む(1日あたり男性60g以上、女性50g以上)ことが主な原因の脂肪肝です。
さらに、病気の進行度によっても分けられます。
〇 単なる脂肪肝(MASLD)
肝臓に脂肪がたまっているだけで、炎症は起きていない、比較的おとなしい状態。
〇 代謝異常関連脂肪肝炎(MASH)
脂肪がたまっているだけでなく、肝臓で「炎症」が起き、肝臓の細胞が壊れたり(風船のように膨らむ)、硬くなったり(線維化)している状態です。これを放置すると徐々に線維化が進み、肝硬変や肝細胞癌がなる可能性があります。
3. なぜ脂肪肝になるか:原因
一番の原因は、食べ過ぎや運動不足によって、エネルギーが余ってしまうことです。特に重要なのが「インスリン抵抗性」という体の状態です。インスリンは血糖値を下げるホルモンですが、肥満や運動不足が続くと、このインスリンの効きが悪くなります(これをインスリン抵抗性といいます)。これは糖尿病を起こす原因でもありますが、それと同時に、体は脂肪を分解して血液中に放出したり、肝臓で新しく脂肪を作ったりする働きを強めてしまいます。結果として肝臓に脂肪がどんどん蓄積されてしまいます。
<主なリスク要因は以下です>
・肥満:特に内臓脂肪が多いタイプ。
・2型糖尿病:糖尿病患者さんの多くに脂肪肝が見られます。
・脂質異常症:中性脂肪やコレステロールが高い状態。
・高血圧
・遺伝:特定の遺伝子のタイプによって、脂肪肝になりやすい人がいます。
4. 検査と診断 ~エコー検査での「脂肪の量」の測り方~
脂肪肝の診断には、血液検査(ASTやALTという数値の上昇)や画像検査が使われます。画像検査の中でも、最も一般的で体に負担が少ないのが腹部超音波検査(エコー検査)です。脂肪肝になると、エコー画像では肝臓が白っぽく輝いて見えます。
〇 血液検査での脂肪肝の評価方法
血液検査で簡単に肝臓の数値(ASTやALT)を測定することで確認できます。簡単に測定できる反面、その日の体調によって大きく影響を受ける点や、脂肪肝以外の肝臓にかける負担と区別ができない点などが欠点です。
〇 超音波検査での脂肪肝の測定方法
肝臓に脂肪がたくさんたまっていると、超音波は脂肪に邪魔されて、奥の方まで届きにくくなります(エネルギーが減衰します)。以前は、お医者さんが画面を見て「肝臓が白いから脂肪肝ですね」「奥が見えにくいから重度ですね」と主観的に判断していましたが、最新の技術では、この「超音波がどれくらい弱まったか(減衰したか)」を機械が計算し、脂肪の量を具体的な数値で示してくれるようになりました。これにより、脂肪肝が「軽度」なのか「重度」なのかを客観的に判断したり、ダイエットをして脂肪がどれくらい減ったかを数字で確認したりすることができるようになっています。
当院では「ATI(Attenuation Imaging)」と呼ばれる手法で脂肪肝の評価が可能な超音波機器を用意しており、簡単に計測をすることができます。費用は(3割負担で)600円ほどで行うことができ、検査も数分で行えます。受診された時に是非ご相談ください(外来が混雑している時には検査が行えない時もあります)
【背景論文】
・Usefulness of US attenuation imaging for the detection and severity grading of hepatic steatosis in routine abdominal ultrasonography (Eun Young Kwon, et al. Clin Imaging. 2021 Aug:76:53-59.) など
5. なぜ脂肪肝を治療しないといけないか?(予後とリスク)
「脂肪肝なんて、みんな持っているから大丈夫」と油断してはいけません。治療が必要な理由は大きく3つあります。
- 肝臓が悪くなる(肝硬変・肝がん)
脂肪肝の一部は「脂肪肝炎」になり、炎症が続くと肝臓が硬くなる「線維化」が進みます。線維化が進むと「肝硬変」になり、お腹に水がたまったり(腹水)、食道の血管が膨らんだり(食道静脈瘤)、最終的には肝不全や肝臓がんになるリスクがあります。特に、すでに肝臓が硬くなり始めている人は特に注意が必要です。
- 心臓や血管の病気になりやすい
実は、脂肪肝の患者さんが亡くなる原因で一番多いのは、肝臓病ではなく、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患です。脂肪肝は全身の血管にも悪影響を与えるため、心臓病のリスクが高まります。
- 他の病気のリスクも上がる
脂肪肝は、糖尿病を悪化させたり、慢性腎臓病の発症に関係したりすることもわかっています。
6. 治療の目標と方法
治療の最大の目標は、「現在の体重から7〜10%減らすこと」とされています。体重を減らすことで、肝臓の脂肪が減るだけでなく、肝臓の炎症や線維化(硬くなること)も改善することが証明されています。
〇 生活習慣の改善
これが治療の基本です。
・食事療法
カロリーを制限し、バランスの良い食事を心がけます。甘い飲み物や高脂肪の食事は避けましょう。
・運動療法
ウォーキングなどの有酸素運動や筋力トレーニングを行います。運動そのものが肝臓に良い影響を与えます。
・お酒を控える
非アルコール性だとしても、お酒は病気を進行させる可能性があるため、できるだけ控えることが勧められます。
・コーヒー
砂糖やミルクを入れないブラックコーヒーを1日2杯以上飲むことは、肝臓の悪化を防ぐ可能性があると言われています。
〇 薬による治療
食事や運動だけで体重が減らない場合や、肝臓の炎症・線維化が進んでいる場合に、欧米では薬を使うこともあります。ただし、日本では「脂肪肝」の病名に対して薬を使うことは保険制度上できないため、脂肪肝に別の病気を合併している時に限り使用することになります。
・GLP-1受容体作動薬
糖尿病を合併している患者さんは使用できる可能性があります。食欲を抑えて体重を減らす効果が高く、肝臓の炎症を改善する効果も確認されています。
・その他の糖尿病の薬
糖尿病を合併している患者さんが使用できる、ピオグリタゾンやSGLT2阻害薬などは、糖尿病の治療と同時に脂肪肝も改善できる可能性があります。
・ビタミンE
末梢循環障害を合併している患者さんは使用できる可能性があります。
7. まとめ
脂肪肝は、肝臓に脂肪がつくだけの単純な状態ではなく、全身の健康に関わる病気です。しかし、早めに気づいて体重を減らし、生活習慣を見直せば、肝臓の状態を元に戻すことができます。エコー検査などの痛みのない検査で、脂肪の量や肝臓の硬さを詳しく知ることもできます。「たかが脂肪肝」と思わず、将来の健康のために、今日から肝臓をいたわる生活を始めましょう。
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