診断に使う血液検査(自己抗体)
関節リウマチの診断に用いる血液検査として、「リウマチ因子」と「抗CCP抗体」があります。
これらは関節リウマチの診断や、将来の病状の進行を予測する上で特に役立つ指標で、「自己抗体」と呼ばれる特殊なタンパク質です。
1. リウマチ因子(RF)
リウマチ因子(RF)は、私たちの免疫システムが作り出す免疫グロブリンG(IgG)というタンパク質の一部を誤って攻撃してしまう抗体です。関節リウマチの方は陽性になることが多いことが知られており、診断に役立てています。
・感度(関節リウマチの患者さんで陽性になる割合):関節リウマチの患者さん全体で見ると、リウマチ因子が陽性となる割合(感度)は、報告によって26%から90%と幅があります。様々な研究を横断的に調べた解析では、平均約69%と言われています。関節リウマチの患者さんの中でも、リウマチ因子が陽性にならない(陰性の)患者さんは30%程度いるということで、リウマチ因子が陰性でも関節リウマチの可能性は十分にあります。
・特異性(陽性になった場合に関節リウマチの割合):リウマチ因子は関節リウマチ特有の検査ではありません。具体的には、リウマチ因子が陽性だった方が、本当に関節リウマチである可能性(特異度)は約85%と言われています(メタアナリシス)。リウマチ因子は、他の膠原病(免疫が自身の体を攻撃する病気)や、特定の感染症(C型肝炎や結核)、さらには関節リウマチではない健康な高齢者の方でも陽性になることがあるためです。例えば、健康な60歳以上の方でも5%〜25%で陽性になると言われています。このため、リウマチ因子が陽性であっても、それだけで関節リウマチと断定することはできません。
・リウマチ因子の数値が特に高いとき:検査でリウマチ因子の数値が非常に高く出た場合(例えば、基準値の3倍以上)、関節リウマチである可能性が格段に高まります。また、臓器を壊すような重症な関節リウマチの可能性が高くなることが知られています。
・治療の見通しとの関連:リウマチ因子が陽性であることは、関節リウマチの患者様にとって、関節の機能が悪化したり、レントゲンで関節破壊が進んだりといった、関節リウマチの予後が悪い(悪くなりやすい)状態を予測する要素の一つでもあります。
2. 抗CCP抗体(抗シトルリン化ペプチド抗体;ACPA)とは
「抗CCP抗体(抗シトルリン化ペプチド抗体;ACPA)」は、リウマチ因子と並んで、関節リウマチの診断において非常に重要な抗体です。リウマチ因子よりも、より正確に関節リウマチの体質を判断できます。
・「シトルリン化」とは:抗CCP抗体は、「シトルリン化」という、アミノ酸のアルギニンがシトルリンという物質に化学的に変化する現象によって作られたタンパク質を標的とします。このシトルリン化は、関節リウマチで炎症が起こっている関節内で生じやすいと考えられています。抗シトルリン化ペプチドを検出する検査として、抗CCP抗体検査(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)が広く用いられています。
・感度(関節リウマチの患者さんで陽性になる割合):関節リウマチの患者さん全体で見ると、抗CCP抗体が陽性になる割合(感度)は、70~75%と言われています。つまり、関節リウマチの患者さんの中でも、抗CCP抗体が陽性にならない(陰性の)患者さんは25~30%程度いるということで、抗CCP抗体が陰性でも関節リウマチの可能性は十分にあります。
・特異性(陽性になった場合に関節リウマチの割合):抗CCP抗体は、関節リウマチに対して非常に高い特異性(約90~95%)を持つとされています。言い換えると、抗CCP抗体が陽性であればその患者さんは関節リウマチである可能性が非常に高いということになります。抗CCP抗体が陽性であれば、少しの関節痛であっても関節リウマチに移行する可能性を考えて注意深く経過をみる必要があります。
・治療の見通しとの関連性:抗CCP抗体が陽性の関節リウマチの患者さんは、陰性の患者さんと比較して、関節の破壊(骨びらん)が進行しやすくなることが知られています。一部の論文では、抗CCP抗体がリウマチ因子よりも、より関節の破壊を予測する数値として優れていると報告しています。
・抗CCP抗体だけ陽性なとき:驚くべきことに、抗CCP抗体は関節リウマチの症状が出る平均3〜5年前から、時には12年以上にわたって血液中で検出されることがあります。これは、関節に炎症が現れるよりもかなり前から、体内で自己免疫の異常が始まっていることを示唆しています。そのため、抗CCP抗体が陽性な方は、仮に関節リウマチを発症していなかったとしても、定期的に関節の様子を確認することが大切かもしれません。
・抗CCP抗体と喫煙の関連:そもそも喫煙は、関節リウマチ発症の最も大きなリスクになることが知られています。その中でも特に抗CCP抗体陽性の患者さんにおいては、喫煙が関節リウマチの進行をより悪くすることが報告されています。
3. 検査の総合的な重要性
関節リウマチの患者さんの約75%~80%が、リウマチ因子または抗CCP抗体、またはその両方が陽性となります。これらが陽性であることは、病気が進行しやすく、重症化するリスクが高いこと(例えば、関節の破壊が多い、関節以外の全身症状が出やすいなど)と関連しています。
その一方で、関節リウマチと診断された患者様のうち、約20%はこれらの自己抗体が陰性(血清陰性関節リウマチ)のまま経過することが重要です。仮に血液検査のみで診断を行っている場合には、関節リウマチの患者さんの20%が見逃されてしまいますし、診断が遅れると障害残る関節破壊が進んでしまいます。
これら自己抗体(血液検査)が陰性の関節リウマチの診断は、主に、関節の腫れのパターンやその他の臨床症状、画像検査の結果など、すべての臨床情報を組み合わせて総合的に判断されます。
これらのリウマチの自己抗体の役割は、例えるなら、「病気の地図」に当たります。リウマチ因子と抗CCP抗体の陽性/陰性は、病気かどうかの進路を示す数値である一方で、それのみで進むのは危険です。常に他の情報(身体所見や経過・画像検査など)と併用して診断に向かっていきます。
当院ではこれら自己抗体の検査を行うことができますし、また自己抗体の限界も知っています。自己抗体に頼りすぎず診断を行うことが大切です。
千葉で関節リウマチの検査が気になった方は、是非「こあら内科クリニック」にご相談下さい!
