食物依存性運動誘発アナフィラキシー
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
「特定の食べ物を食べただけなら何ともないのに、食べた後に運動をするとアレルギー症状が出る」。
これは「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」と呼ばれるアレルギーの一種です。
学校で給食を食べた後に、昼休みや午後の授業で動いたときに症状が出やすいです。ここではこの病気について解説します。
1. 食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは
通常のアレルギーは、原因となる食べ物を食べるとすぐに症状が出ますが、このタイプは「原因となる食べ物の摂取」と「運動」の2つの条件が重なったときに初めて症状が現れるのが特徴です。
1) 食べ物だけなら平気
原因となる食べ物を食べて安静にしていれば、症状は出ません。
2) 運動だけなら平気
何も食べていない状態や、原因ではない食べ物を食べた後に運動しても、症状は出ません。
3) 組み合わせると危険
原因となる食べ物を食べてから数時間以内に運動をすると、急激に強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こります。
なぜ運動が引き金になるのかは完全には解明されていませんが、運動によって腸からのアレルゲン(アレルギーの原因物質)の吸収が高まったり、体の生理的な変化が起きたりすることで、アレルギー反応が誘発されると考えられています。また、運動以外にも、疲労、ストレス、睡眠不足、風邪などの体調不良、生理(月経)、アスピリンなどの解熱鎮痛剤の服用、飲酒などが重なると、より症状が出やすくなることがわかっています。
2. 有病率や疫学
このアレルギーは決して珍しいものではありませんが、一般的な食物アレルギーに比べると頻度は低いです。
- 年齢層
中学生や高校生、若者に多く見られますが、小学生や大人でも発症することがあります。 - 性別
男性にも女性にも同じくらいの割合で見られます。 - アレルギー体質
患者さんの多くは、花粉症やアトピー性皮膚炎など、他のアレルギー疾患を持っている傾向があります。
3. 原因となる食べ物の種類と頻度
どんな食べ物でも原因になる可能性がありますが、特に以下のものが原因として多く報告されています。
1) 小麦
- 日本や欧米で最も多い原因です
- パン、うどん、パスタ、ラーメンだけでなく、天ぷらの衣やカレールーなどの小麦粉でも起きます
2) 甲殻類
- エビやカニなども比較的多い原因の一つです。
3) その他の食材
- 果物、野菜、ナッツ類、そば、大豆、牛乳、卵、肉類なども原因となることがあります。
食べた量も関係しており、少し食べただけでは症状が出ず、たくさん食べたときに運動すると症状が出るケースもあります。
4. 症状
症状は運動中、または運動直後に突然現れます。最初は皮膚の症状から始まり、急速に全身へ広がることがあります。
初期症状
皮膚が赤くなる、じんましんが出る、体がかゆくなる、なんとなく体がだるい、といった症状から始まることが多いです。
進行した症状
- 呼吸器: 咳が出る、ゼーゼーする、息苦しくなる、声がかすれる。
- 消化器: お腹が痛くなる、吐き気、下痢。
- 全身: 血圧が下がってふらつく、意識がもうろうとする、倒れてしまうこともあります。
これらの重い症状が複数同時に現れる状態を「アナフィラキシー」と呼び、命に関わる危険性があります。
5. 検査
診断のためには、専門医による詳しい検査が必要です。
自己判断せずに専門医(アレルギー科など)を受診しましょう。
診断方法は食物アレルギーと同様になります
詳しくは「食物アレルギー」の「検査の方法」をご参照ください
※ こあら内科クリニックでは、受診した当日にアレルギーの血液検査を実施することができます
気軽に受診してご相談ください。
6. 治療薬
根本的に治す薬は現在のところありません。万が一症状が出たときの対応薬が処方されます。
エピペン®など
アナフィラキシーなどの重い症状が出たときに、患者さん自身や保護者が太ももに注射する薬です。アナフィラキシーの進行を食い止め、命を救うための唯一の薬です。
抗ヒスタミン薬(飲み薬)
軽いじんましんやかゆみを和らげるために使われますが、アナフィラキシーのような重い症状を止める効果はありません。
7. 治療目標
最大の目標は、「アナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)を起こさないこと」です。原因となる食べ物を完全にやめる必要がない場合も多いため、「安全に食事と運動を楽しむためのルールを見つけること」も大切な目標です。
8. 日常生活での注意点
このアレルギーと付き合っていくためには、生活の中でいくつかのルールを守ることが重要です。
① 「食べてすぐ動かない」が鉄則
原因となる食べ物を食べた後は、少なくとも2〜4時間は運動を控えてください。学校の体育や部活動がある場合は、給食や昼食で原因食物を食べないようにするか、量を減らすなどの対策が必要です。逆に、運動した直後(30分〜1時間程度)に原因食物を食べることも避けたほうが安全です。
② 体調が悪いときは特に注意
風邪気味のとき、寝不足のとき、疲れているとき、生理中などは、いつもより症状が出やすくなっています。このようなときは、原因食物を避けるか、運動を中止することが大切です。また、解熱鎮痛剤の使用やアルコール摂取も症状を誘発しやすくするため、これらと原因食物・運動の組み合わせは避けましょう。
③ 初期症状が出たらすぐに運動中止
運動中に少しでもかゆみやじんましん、違和感を感じたら、「これくらいなら大丈夫」と思わず、すぐに運動をやめて休憩してください。無理に続けると、あっという間に重症化して倒れてしまうことがあります。
④ 周りの人に伝えておく
学校の先生、部活の顧問、友人、職場の同僚などに、「自分はこういうアレルギーを持っている」と伝えておきましょう。万が一倒れたときに、周囲が状況を理解していれば、代わりにエピペンを打ってもらう、すぐに救急車を呼んでもらうなど、迅速な助けが得られます。
⑤ 緊急時の対応を確認する
エピペンを持っている人は必ず携帯し、使い慣れておきましょう。また、どのタイミングで救急車を呼ぶべきか、主治医と相談して「緊急時対応プラン」を作っておくと安心です。
当院ではアレルギー学会の専門医資格を持った医師が治療にあたります。
千葉(幕張)で食物依存性運動誘発アナフィラキシーにお困りのかたは、是非「こあら内科クリニック」にご相談下さい!
